KAJIYA BLOG

人文系大学教員の読書・民藝・エッセイブログ

人文学

日常を持ち出すーポータブルな日常について

学生の卒業研究指導をしていると、様々な思わぬヒントが得られる。 学生本人よりも教師の方が得ることの多い指導回もあるかもしれない。それはもちろん本意ではないんだけど。 先日、外国人訪日観光客は日本の何に惹かれて来るのか、ということをテーマに学…

ウポポイ、行ってきた

この度、やっとのことで北海道白老町にある民族共生象徴空間ウポポイに行ってまいりました。 開館以来、ずっと行きたい行きたいと思っていましたが、やはりコロナが足かせとなって行けずにいたのですが。まん防解禁に合わせて、日帰りでの白老訪問です。 札…

新潟紀行(3)ー塩沢

新潟紀行も3つ目の記事である。 前回は出雲崎での見聞を書き綴った。その後柏崎でこの所集中的に研究対象としている人物、吉田正太郎についてのリサーチを行った。これについては論文に書く内容なので、省略する。 * その後、柏崎から新潟に戻る途中、一日…

新潟紀行(2)ー出雲崎

新潟市から海岸線を南下すると出雲崎という古い町に至る。 出雲崎町の人口は4,000人程度。日本海側の静かで小さな港町といった風情だが、歴史的にも文化的にも重要な地域である。 今となっては、北陸自動車道も上越新幹線、信越本線も出雲崎は通過せず。JR越…

新潟紀行(1)ー新潟

久しぶりの研究出張で道外に来ている。新潟県である。昨年は、コロナの波の谷間を縫って、東京に1回行ったきりでほぼ出張はなし。研究に関する資料はある程度ネットを通してなんとかしてきたけれども、どうしても現地で見なければならない資料がある。今準…

民藝と家庭料理:土井善晴という思想家について

ーー家庭料理は民藝である。 料理研究家の土井善晴氏(以下敬称略)の言葉である。 そして、土井の近著で今話題となっているのが、『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫、2021年)。ただこの本はいわゆる“料理本”ではない。まぎれもない思想の書だ。 一汁…

哲学の有用性の切実さについて(読後感想)

この週末、新刊新書2冊を読んだ。 1冊目は高桑和巳『哲学で抵抗する』集英社新書 2冊目は川瀬和也『ヘーゲル哲学に学ぶ考え抜く力』光文社新書 いずれも気鋭の研究者による哲学に関する考察である。 高桑氏によるものは、カントやヘーゲルなどのいわゆる哲学…

人文社会学はスローシンキングで

社会学者・森真一氏の『スローシンキング 「よくわかっていない私」からの出発』という本を読んで改めて考えた。 本書で森氏はご自身の授業準備のプロセスを紹介しながら、社会学とはゆっくり考える学問だと主張する。スローフードになぞらえ「スロー社会学…

『プロ倫』から神秘主義を経て民藝論にいたる

その後も学生たちと『プロ倫』を読み続けている。ちょうど第二章に入ったところで、いよいよ禁欲的プロテスタンティズムの分析に入るところだ。 この本を読みながらつくづく思うのは、欧米の学問にはキリスト教の知識が必要不可欠ということ。宗教改革とカト…

カズオ・イシグロの言葉

カズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞したのは2017年のこと。すでに5年も前のことである。 今では日本中にこの作家のファンがいる。日本にルーツを持つということで、日本人ノーベル賞受賞者として大きな話題を呼んだ。ただ、私がこの作家のことを気にす…

もし、本をどうやって読んだら良いかわからない、と大学一年生に問われたら

大学生がなかなか本を“読まない”と言われて久しい。すでに一般論になってしまっているし、月の読書時間が0分という学生が50%近いというデータ*1もあるから、ひとまずそういう前提で考えてみたい。 ところで、このブログ記事では「読まない」ということと「…

禁欲についてープロ倫からミニマリズムへ

昨年の末頃から、教え子たちと語らって読書会を始めた。強要したわけではなく、どちらからともなく始めてみようかという話になってのこと。私も大学生の頃、いろいろな読書会、勉強会に参加していたが、今もこういう学生がいるんだな、と懐かしい気持ちにな…

一日一冊主義という修行

学生時代、一日一冊本を読むと決めて過ごしていた時期がある。もう30年近くも前、大学3年の頃のことだ。 読書は当時から好きだったけれども、どちらかと言えば、自分の無知に対するコンプレックスから始まったチャレンジだった。とにかく何かの知識が得られ…

古い新書

年末年始も読書三昧。午前中、読書をして過ごし、昼食後、書店に行って本を物色する。購入した本をカフェでしばし読み、帰宅して続きを読む。大変幸せな毎日である。 年が改まって、書店の雑誌、新書コーナーには、早速大河ドラマの主人公である北条義時の文…