KAJIYA BLOG

人文系大学教員の読書・民藝・エッセイブログ

ウポポイ、行ってきた

この度、やっとのことで北海道白老町にある民族共生象徴空間ウポポイに行ってまいりました。

開館以来、ずっと行きたい行きたいと思っていましたが、やはりコロナが足かせとなって行けずにいたのですが。まん防解禁に合わせて、日帰りでの白老訪問です。

札幌から白老まで特急で約1時間半。私は特急内では読書できますので(バスは酔うので読めない…)本当にあっという間です。

そして白老駅からウポポイまで徒歩15程度でしょうか。札幌からでも新千歳からでも想像以上にアクセス良しです。

駅からウポポイへの道の途中、松浦武四郎の石碑がありました。「民族共生の人」とあります。松浦武四郎は北海道を命名した人物でもあり、2018年は北海道命名150年として記念事業が行われ、その際松浦武四郎が大きく取り上げられました。

武四郎は命名者であるだけでなく、民族共生思想の持ち主もありました。150年後の今、まさに武四郎の思想が求められる時代になったということですね。

過去の思想や文化を古臭いものとして追いやらず、大切に受け継ぎ、今の時代に活かすことの重要さを感じます。

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松浦武四郎

さて、ウポポイですがとても広いです。博物館がメインの建物でしょうけれども、アイヌの生活空間を再現したコタン(村)やポロト湖、そしてウポポイを取り巻く環境全体が展示に含まれていると感じます。

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ウポポイ入場口

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構内マップ

構内の奥に行くと茅葺きの建物の内部でアイヌ舞踊の公演や文化体験などが常時行われています。ライブ感のある文化展示ということですね。スタッフのかたがアイヌ文様のジャケット?を来ていて、なんともかわいらしいです。

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博物館も大変立派なものです。

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博物館外観

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展示内部(写真のみ撮影可)

コロナ対策のため観覧は予約制、一応1時間で入れ替えという制限があるようです。私は2時間位おりましたが、特にお咎めもなくゆっくり見ることができました。

展示は開放的で、個室に分かれず、室内を自由な順番で見て回ることができるようになっています。テーマは服飾、食、工芸、文学、生活、北方民族の歴史とアイヌ、道具類などなど、多岐に渡ります。

アイヌの展示では、しばしば倭人からの収奪、圧政、差別などが強調されがちですが、ウポポイではそれは控えめと思いました。

過酷な歴史的現実から目を背けてはなりませんし、過去のことと割り切ることはできないアイヌの方々も大勢いるのも事実です。

その一方で日本という国の中の一つの民族的文化として受け継がれ存在している、日本の中で共存していることを伝える、未来志向の展示には好感を持ちました。

少し砕けた言い方をするならば、アイヌ民族アイヌ文化はカッコイイ、と感じるのです。

私はこれまで柳宗悦研究を通じて、日本と韓国との文化交流にも関心を持って研究してきました。そこでも確かに歴史的な問題は看過することはできないし、わだかまりを持っている人もいます。
でも、お互いの文化を尊重する気持ち(つまり、カッコイイ、クールだと思える気持ち)によって、難しいわだかまりを一気に飛び越えていってしまう交流のあり方を幾度も見てきました。
文化で問題が解決しますよ、などという気は全くありませんが、前進するための大きな一歩になることは確実です。

その意味で、好感を持った、ということです。

今回はまだ雪の残るウポポイでした。春になって緑が芽吹いたら、夏になって緑が深まったら、秋になって葉が色を変えたら、その都度ウポポイは美しい姿を見せてくれると思います。

何度も行って展示を見疲れたら、ぼんやりポトロ湖を眺めれば、癒やされさそうだな〜という空間でした。

おすすめです。

(今回はどういうわけか、文章が敬体(ですます体)でしたね。)